Monolix は、Inria(Institut National de la Recherche en Informatique et Automatique)を中心とした統計やモデリングに関する10年間の研究により開発された母集団 PK/PD モデリングソフトウェアです。
非線形混合効果モデルのパラメータ推定、モデル評価を実現します。
Monolix の機能
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母集団モデル構築
GUI を介した容易な操作で母集団基本モデル~共変量検討による母集団最終モデルの構築までを簡便な操作で構築することができます。
母集団パラメータの算出には、Stochastic Approximation Expectation Maximization (SAEM アルゴリズム)を用います。
SAEM アルゴリズムの特徴
- 最小二乗法(OLS)や非線形最小二乗法(NLS)と比較して、収束速度が速い
- 多数のパラメータを同時に推定可能
- 計算が単純であり、パラメータの初期値が適切であれば、ローカル最適解に収束
- 線形から非線形まで、様々なモデルに適用可能
SAEM アルゴリズムは、2つのフェーズで構成されます。最初のフェーズ(exploratory)では、アルゴリズムはパラメータ空間を探索し、最尤推定値の近傍に到達します。
第2フェーズ(smoothing)では、推定値は最尤法に向かって収束します。exploratory から smoothing への切り替えは、収束基準に従って行われます。
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ブートストラップ
2024R1 からインターフェース上でブートストラップが実行可能になりました。ブートストラップは、元のデータセットから多数の複製データセットを生成し、それぞれのデータセットでパラメータを再推定することにより、より正確なパラメータの不確実性の推定が可能になります。
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自動モデル構築
Monolix には、自動でモデル構築を行う機能が搭載されています。モデルの構築は段階的な共変量モデリング手法である “SCM” に加えて、段階的アプローチの条件付きサンプリングを利用した “COSSAC”、共変量効果に適用された “SAMBA” が用意されています。
“COSSAC” では、尤度を改善する可能性が最も高い関係(相関テストで示される)が最初に実行され、尤度が十分に改善されるとそのモデルを採用し、次の実行に移ります。右の図にある通り、最終的なモデルは SCM も COSSAC も同じになりますが、SCM では43回の実行が必要であるのに比べ、COSSAC では 6回の実行で最終モデルに到達することが可能です。
解析実行例
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母集団 PK モデル構築
以下の手順により母集団 PK モデルを構築します。
Source File の読み込み
- MonolixSuite の標準データ形式に合致していないファイルの場合でも GUI 上 でデータをコンバートして読み込むことが可能です。
- 必須入力パラメータ(ID, 時間, 測定値, 投与量) に加えて、共変量、BLQ、複数投与情報などのパラメータを入力可能です。
構造モデル構築、モデル評価
- MonolixSuite に搭載されたモデルライブラリから構造モデルを構築し、実測値、プロットなどとの比較から評価します。
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3 コンパートメントを選択して構築し直したモデルのプロットを確認すると、2 コンパートメントモデルに比べ、対照的にプロットされており、3 コンパートメントモデルが適していることがわかります。
- 共変量モデル構築、相関モデル構築
- 被験者毎のパラメータ分布の定義に有益な共変量を追加すると、変量効果の標準偏差で表される原因不明の個体間変動が減少します。最も強い相関(最も低い P-VALUE 値)を持つ共変量を追加して、モデルを改善させます。
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Q3 と AGE の間に最も強い相関があることが分かります。モデルに共変量として AGE を追加して各タスクを再度実行します。共変量を追加した結果、Q3 と AGE 間の相関がなくなり、また、AIC や BIC が減少したことからモデルが改善されたことが分かります。
共変量と同様に最も有意な個々のパラメータ間の相関モデルに追加して、尤度を向上させ ます。 - Cl と V1 の間に最も強い相関があることが示されています。モデルに Cl と V1 の相関を追加して、モデルが改善するかを確認します。
- モデル診断、適格性評価
- モデルの最終評価は Visual Predictive Check プロットで行います。図のように測定データの経験パーセンタイル値のプロットといくつかの予測区間(10%, 50%, 90%)が表示されます。外れ値がある場合は赤い点と領域で強調表示され、モデルの改善が必要かを確認することができます。
共変量や変量効果間の相関評価を行ったことで、ほとんど外れ値がないモデルを構築できたことがわかります。
最後に収束と推定値が様々な初期推定値に対してロバスト(堅牢)であることを確認します。Convergence assessment を実行して、異なる種や固定効果のランダムな初期値でパラメータ推定とモデル評価を複数回実行します。
実行後、結果がプロット、マトリックスで表示されます。以下のプロットの通り、実行下5回全てで同じ範囲内に最小値が得られたことが分かりました。
詳細な操作例については、Web ミーティングにてデモンストレーションをお見せ致しますので、お問い合わせフォームからご連絡ください。