GastroPlus® のより深い理解とユーザー間の情報共有を目的として、今年も、同製品開発元である Simulations Plus 社との共催で、GastroPlus® ユーザーミーティング 2024 を下記のとおり開催いたします。
今年のユーザーミーティングでは、Simulations Plus 社から、同社の新製品情報や最近のトピック、当局における承認申請関連のテーマについてのプレゼンがございます。ユーザー発表の時間では、活用事例などを 3 名の方にご紹介をしていただく予定です。
最後に、昨今話題となっている PBBM(Physiologically Based Biopharmaceutics Modeling)シンポジウムを開催いたします。パネリストの皆様の発表、総合討論を通し、PBBM について理解を深めていただく機会になると存じます。
今年も、ミーティングの終了後に情報交換会を開催します。ご歓談を通して、Simulations Plus 社および GastroPlus® ユーザーの皆様が互いに交流を深めていただけますと幸いです。
日 時: | 2024年11月22日(金)10:00~17:00 (~19:00 情報交換会) |
場 所: |
東京・品川シーズンテラスカンファレンス ホール 東京都港区港南 1-2-70 品川シーズンテラス アネックス 3階 |
定 員: |
70名 (参加無料)
※ 各サイトからの参加可能人数は、GastroPlus® 1 Core ライセンスに付き、コマーシャルサイト 4名、ガバメントサイト 2名、プレミアムサポートアカデミックサイト 1名 となっております。 |
参加申込: | 9月12日(木)~11月15日(金) ※ 各お客様サイトの GastroPlus® 窓口担当者の方に別途メールでご連絡致します。 |
※ 参加お申し込み後のキャンセルについても、お食事等の手配の関係もありますので 11月15日(金)までにお伝え願えれば幸いです。
9月中旬に各お客様サイトの GastroPlus® 窓口担当者様へ詳しい内容と参加申込方法を弊社よりメールにてご連絡いたします。
勝手ながら各サイトからの参加者数は、GastroPlus® コア 1 ライセンスにつき、コマーシャルサイトは 4 名様まで、ガバメントサイトは 2 名様まで、プレミアムサポートメンバーのアカデミックは 1名までとさせて頂きます。
(最終更新日:11月6日)
2024年11月22日 品川シーズンテラスカンファレンス ホール
P-glycoprotein (P-gp) は多くの臓器に存在するトランスポーターで、薬物動態に重要な役割を果たしている。P-gp を介した薬物間相互作用(DDI)がこれまでに多数報告されており、阻害剤や誘導剤との併用時に P-gp 基質の薬物濃度が変動することが知られている。これらの P-gp 基質の薬理作用と安全性を適切に管理するためには、併用時の DDI の程度を正確に把握することが不可欠である。
従来、P-gp を介した DDI は主に小腸での相互作用が大きく関与すると考えられてきた。しかし、肝臓にも P-gp が発現しており胆汁中への薬物排出に関与していることから、肝臓での DDI は血中濃度だけでなく肝臓中濃度にも影響を与え、肝臓における薬理作用や副作用に関わることも考えられる。ただし、肝臓中薬物濃度の測定は血漿に比べるとハードルが高いため、P-gp 阻害剤併用時の血漿中および肝臓中濃度変動のシミュレーションを行い、理論的なアプローチにより肝臓における P-gp が DDI に及ぼす影響をより明確にしていくことは有用であると考えた。
そこで本発表ではこれまでの P-gp を介した DDI 研究を共有しつつ、Gastroplus® DDI module を用いた DDI シミュレーションを行い、消化管および肝臓における P-gp を介した DDI に影響を与えうる要因を検証した。さらにこれらの知見に基づいて臨床的な影響についても考察を行う。
医薬品は、食事自体または食事による生理的変化により体内動態が変化することが知られている。医薬品開発においても食事による体内動態の変化は臨床試験デザインに影響するため、事前に食事の影響を検討することは重要である。日本のガイドラインにおいては最終製剤を用いた食事の影響評価に関する臨床試験が推奨されており、そのタイミングでは各種データが取得されていることから PBPK モデル等によるメカニズムベースの検討も重要と考えられる。始めに食事の影響を予測する目的で機械学習モデルについて検討した。構造由来の特徴量を用いた機械学習モデルの予測精度は低かったことから、構造情報だけから食事の影響を予測することは現段階では難しいと推定された。次に、機能性ディスペプシア治療薬アコチアミドに関する食事の影響について PK モデルを用いた検討を行った。アコチアミドは絶食投与と比較して食前投与で Cmax の増加、食後投与で AUC の低下が報告されている。これら変化の原因としてアコチアミドによる胃排出能の促進作用、食事成分による吸収阻害などが考えられたため、関連パラメータの感度分析を実施した。感度分析の結果、胃トランジット時間及び膜透過速度を変化させることでアコチアミドに関する食事の影響についてシミュレート可能であった。以上から、現段階では医薬品の体内動態に与える食事の影響については、PK モデルを用いたケースバイケースの検討が有効であると考えられた。アコチアミドは食後膨満感等の機能性ディスペプシア症状改善のため食前投与されるが、食前投与はポジティブ効果を示すことから、服用者は食事の前に服用することでより効果的な症状緩和が期待できる。
これまで我々は、ヒトにおける消化管吸収特性をより精緻に定量的に予測するための新規実験系として、筑波大学消化器外科の小田竜也教授の協力の元、膵がんおよび大腸がん患者より治療上の必要性に応じて切除された手術残余検体から調製したヒト crypt 由来消化管幹細胞を 3D 培養して継代培養し、必要に応じ 2D 展開して吸収上皮細胞へと分化させ単層を形成させることで、代謝酵素やトランスポーターの基本的な機能や CYP3A 基質薬物の代謝回避率(Fg)値の予測、転写誘導による CYP3A 発現・活性の上昇を確認してきた1,2)。さらに、倫理面について研究利用について包括同意がとられている市販ヒト凍結小腸検体(CHIM)からも小腸幹細胞を調製できることを確認しており、その分化細胞の代謝・輸送活性がこれまでに樹立してきた株と比較しても遜色ないことを確認してきた。また、今後創薬スクリーニング系としての適用を考慮し、より細胞数を少ない量で多くのアッセイを実施できるよう、コラーゲン線維を culture insert の膜として適用した ad-MED Vitrigel 2 の 96 well 版を用いた結果、従来の 24 well culture insert とほぼ同様の結果を得ることができた。
また、薬剤誘導性の消化器障害の予測系として、これまで消化管幹細胞の 3D スフェロイドに直接薬物を暴露させて ATP 減少率を観察する下痢リスク予測系や enterochromaffin (EC) 細胞リッチなスフェロイドを用いて、薬物の暴露時のセロトニン放出量を観察する嘔吐・悪心リスク予測系を構築してきた。併せて、細胞表面のムチン層の崩壊は、小腸管腔内物質や腸内細菌が直接的に上皮細胞層に接することにより炎症の惹起につながることから、消化器毒性のトリガーになりうると推察される。そこで我々は、細胞表面のムチン層の高さや密度を定量化する方法論として、蛍光ビーズを細胞表面に適用して一定時間後に蛍光顕微鏡で Z-stack 画像を得ることによりビーズの高さ分布を数値化する方法を確立した。さらに、粘膜層の影響を見やすくするためにムチン層をより増加させるべく、goblet 細胞リッチな単層形成法を見出した。それを用いて、複数種の NSAIDs 曝露後のムチン層高さを推定したところ、COX-1, 2 非選択的なインドメタシンでは、薬物濃度依存的なムチン層の減少が観察されたのに対して、COX-2 選択的なセレコキシブでは、ムチン層の減少が観察されなかった。これにより、ムチン層の形成に影響する薬物をスクリーニングできるものと考える。さらに本実験系は、ムチン層が薬物吸収に与える影響についても定量化できる可能性があると考えている。
PBPK モデルに生物薬剤学的な観点を加えた PBBM モデルの利用が欧米を中心に高まっており、日本国内での PBBM 利用の今後の動向が注目されています。
そこで今回、産官学の各分野でご活躍の PBBM に精通したサイエンティストの方々のご協力を得て、PBBM シンポジウムを開催する運びとなりました。シンポジウム最後の総合討論では、パネリストとして、医薬品医療機器総合機構 新薬審査第五部の吉田 秀哉 様も加わり、参加者全員で討論できる時間を設けてあります。
オーガナイザー: 中外製薬株式会社 江本 千恵 様
Physiologically based pharmacokinetic model は薬物動態の分野において、薬物相互作用のリスク評価や特殊な背景を有する患者での血中濃度推移予測などで新薬開発において広く用いられてきている。これに加え近年、薬物の吸収を精緻化したモデルである physiologically based biopharmaceutics modeling (PBBM) が着目されてきている。PubMed の検索結果においても、2019年以降、報告数が増加していることが認められており(Mackie et al., Mol. Pharmaceutics, 2024)、2020年には、FDA から PBBM の使用に関するガイダンス案が発出されている。
医薬品開発において、PBBM はその特性から、対象とする製剤での血中曝露予測、食事やAcid-Reducing Agents による薬物動態の変動予測に活用することが期待されている。特に、非臨床段階での first in human/patient 試験前の製剤選択や、臨床開発段階での製剤変更、承認後のライフサイクルマネジメントや患者ニーズに応じた製剤変更・追加など、幅広い開発ステージでの活用が見込まれている。臨床段階においては、製剤変更による薬物曝露の変動、小児開発においては、小児用製剤への変更に加え、小児での生理学的変化が薬物動態に及ぼす影響を予測・評価する際に用いられる。これらの製剤の変更は、場合によっては用法・用量の再設定が求められることもあり、医薬品開発上で重要な情報提供になり得る。このため、製剤、薬物動態、臨床薬理などの部門間の連携が一層重要となる。
これらを背景として2023年8月に、FDA と University of Maryland Center for Excellence in Regulatory science and innovation (M-CERSI) により PBBM に関するワークショップが開催された。その際、ワークショップの議論を活性化するため、参加者に対してサーベイが実施された。このイニシアティブと同様に、国内からの産官学の参加者を対象に PBBM の利用と申請経験の現状や課題を探るためのサーベイを実施した。本シンポジウムでは、PBBM 活用に対する期待と共に、サーベイによって得られた国内での PBBM 活用の現状を報告する。
生物学的同等性における ICH ハーモナイズは、2020年に ICH M9(Biopharmaceutics Classification System (BCS) Based Biowaiver ガイドライン)がハーモナイズされた後、2024年に Step4 へと ICH M13A(即放性製剤の生物学的同等性試験ガイドライン)が進み、ICH M13B(即放性製剤の含量追加ガイドライン)が来年には Step2 へ移行が見込まれており、BE に関するレギュレーションの国際化が進んでいる。ICH M9 は、日本のレギュレーションへ Biopharmaceutics Classification System (BCS)、Biowaiver 及び Caco-2 膜透過性などを導入した。日本の「経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドライン」では薬物の物性で細分化せずに処方変更の自由度があったガイドラインが、BCS Class 1 はこれまで以上に変更可能となり、BCS Class 3 の変更幅は縮小されるなど、薬物のリスクに応じた製剤の Biowaiver が始まったと言える。一方で、ICH M13A では PBPK(PBBM)による Biowaiver 活用について記載されるなど生物学的同等性や Biowaiver に関して ICH の改定へのスタートでもあり、日本でも産官学でのコミュニケーションを活発化しなければならない時期にあると考えている。
私からは ICH M9 の概要や BCS Based Biowaiver がハーモナイズされる際にサイエンスベースでの適用拡大された箇所について説明するとともに、PBBM 活用などにより次の改定での適用拡大への期待を話題として提供致します。また PBBM 活用による規格溶出試験設定(Clinically Relevant Dissolution)についても会場の皆様と共に議論させて頂きたいと考えております。
Physiologically Based Biopharmaceutics Modeling(PBBM)は文字通り、
Biopharmaceutics を用途とした数理モデリングアプローチである。PBBM と PBPK for Biopharmaceutics Application を別物と捉える考え方も一部ではあるが、ここでは "Biopharmaceutics" に関連するモデリングを PBBM と表現する。PBBM は創薬や製剤開発、臨床開発など、製薬企業の研究開発の様々な側面で効果を発揮する極めて有益な考え方である。新薬申請時に臨床試験の代替や品質の根拠という用途で使用しているケースはまだ多くないかも知れないが、医薬品開発の成功確率向上・期間短縮のための社内利用については多くの事例があると思われる。
一方で Biopharmaceutics を適切に記述する PBBM の確立は、必ずしも容易ではない。これは医薬品を経口投与したときに生じる体内での重要な全ての現象を、適切な微分方程式とパラメータで記述しなければならないからである。PBPK に代表される薬物動態学の理解に加えて、消化管生理学、製剤学、物理薬剤学などの多角的な分野の知識と経験が PBBM には求められる。
本講演では、難易度の高い PBBM 活用法とされる、バーチャル生物学的同等性試験、薬物吸収への食事の影響の予測、溶出試験の品質規格と PBBM の考え方など、いくつかの最新の研究事例を紹介する。いずれのトピックについても現時点では、市販のソフトウェアも含めて完全にメカニスティックな PBBM は困難であり、今後の PBBM 技術の発展や製薬企業における活用の課題を議論したい。
PBBM(Physiologically based biopharmaceutics modeling)は PBPK(Physiologi-cally based pharmacokinetics)の一部とされ、食事の影響、pH 依存の薬物相互作用の検討や Virtual BE 試験などの検討の他、品質の観点での検討に際し、有用な情報を与えることが期待されている。
2023年度8月には米国食品医薬品局(USFDA)及びメリーランド大学 Center of Excellence in Regulatory Science and Innovation(M-CERSI)の共催により PBBM に関するワークショップが開催された。ワークショップの開催に先立ち、製薬企業より提供された PBBM を利用した実際の事例を用いた Case study が PMDA を含む6つの規制当局により共同で実施された。本ワークショップでは Case study の報告の他、solubility、modeling in vitro dissolution、precipitation、safe space 等の具体的な課題について議論が行われた。
本講演では、上記の PBBM M-CERSI ワークショップの概要も含む PBBM に関する最近の動きや、PMDA における対応の状況等を紹介したい。
東京都港区港南1丁目2番70 品川シーズンテラス カンファレンス ホール
(シーズンテラス アネックス 3 階)
品川シーズンテラスカンファレンスの「ホール」という部屋がユーザー会会場になります。
ホールは、以下の地図に従い、シーズンテラスの正面まで進み、そこからエスカレーターで建物内部に入って左側(Annex 側)になります。左側に進むと、エスカレーターがありますので、3階までお越しください。
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